雇われない生き方を目指す人の必修科目! クリエイターのための自営学
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3. 自営計画書を作成しよう!

独立して仕事をスタートさせる前に、是非シミュレーションとして、以下の計画書を作成しておこう。自分の仕事を数字で掴んでいるかどうかは、大変重要なことだ。とかく、物づくりを本業とするクリエイターは、数字より、いかに良いものを作るかに視点を合わせてしまうが、先にも述べたように「個人事業主」になることを忘れちゃいけない。

特に、会社を作ろうと考えている方は、頑張って作成しよう。

 3-1 原価計算に学ぶ自分の値段のつけ方
≫3-2 固定費(仕事をしなくても毎月出ていくお金)を算出する
≫3-3 年収を決める
≫3-4 利益計画を立てる(いくら儲けるか! 楽しい計算♪〜)
≫3-5 売上計画を立てる
≫3-6 “夢”を描こぉーー!

3-1 原価計算に学ぶ自分の値段のつけ方 

私は長年、料金表がないこの業界の仕事のやり方を不思議に思ってきた。それに、クリエイティブの仕事も、もう言い値でやる時代ではないと思う。クリエイティブな仕事にも「適正価格」があり、それを割り出す原価計算の方式があってよいはずだ。

しかし、クリエイターの仕事は、頭の中に出来上がったイメージを何らかの形に表現する作業だから、一般の商品を作る作業と違い、原材料費などの仕入経費がないために計数化しにくいのが特徴だ。(*裏付けのある数字で価格を付けている方がいたら、是非教えて欲しい。)

では、ケーススタディとして、広告クリエイターの仕事の原価を考えてみたい。


クリエイターの原価計算とは?




・仕事の打合せに要した時間経費 時間単価
・仕事に要した時間経費 時間単価




・蓄積されたノウハウの使用料
(デザイン料とか企画料にあたるもの)
ノウハウの使用料


・仕事に要した資料等取材経費 実 費
・交通費 実 費
・通信費、その他経費 実 費

 
私が考えた算出方法は、時間経費は時間単価を設定して算出する。時給いくらという計算。これは、税理士とか弁護士とかがコンサルティングした場合の計算方法を参考にした。そして、ノウハウ料は業界の相場を参考に、自己評価してみる。いかがだろうか?

そして、これに利益を加える。(利益の中から固定費を支払うことを忘れないように)利益計算は後述しているので、参照して欲しい。

では<原価+利益=適正価格>となるよう、自分の商品の値段をつけてみよう。ここで付ける値段は、あくまでも基準で、受注時に仕事内容に合わせた見積をする。

個人で仕事をしていこうとすると、競合他者との差別化から安いことを売りにしてしまいがちだ。利益を度外視して、安い値段で仕事をしていくと、いつまでたっても資金力が出来ず、悪循環になる。ソフト業界に薄利多売は不可能。なぜならば、自分の体は1つ、1日は24時間。寝ないで仕事しても限界があり、薄利では、人を使えば赤字となるからだ。
「働けど、働けど、我が暮らし楽にならず。じっと通帳の残高を見る。」こうなってはいけない。

 

3-2 固定費(仕事をしなくても毎月出ていくお金)を算出する

ここで、毎月支払っている費用や最低生活費の合計を計算しておこう。

        固定費の計算       単位:円

家 賃 家賃、管理費  100,000
食 費 ※予算金額として 50,000
水道光熱費 水道、ガス、電気料金 10,000
通信費 電話料金、携帯電話料金、
インターネット関連料金等
20,000
消耗品費 ※予算金額として 10,000
保険料 健康保険、年金等 20,000
交通費 ※予算金額として 15,000
交際費 友人との飲食代等 20,000
その他 借入金の返済等 0
合計金額:毎月の最低生活費固定費  245,000

 
自宅を事務所にして仕事をする場合は、単純計算で、この固定費が最低限稼がければならない金額となる。

 

3-3 年収を決める

では、年収を決めよう。独立すれば、年収だって自由に決められる。先ずは生活費確保の300万円、次はプロ級の500万円レベル、最終的には1000万円を目指す!、とか。

“仕事がいつ来るか分からないのに、年収だなんて”と思う方がいたとしたら、ゲットできるかどうかはやる気しだいと言いたい。仕事はいつ来るか分からないし、売上は成行きで仕方ないと考えていると、収入はいつまでたっても安定しない。

目標を設定すると、次に、そこへ到達するために、何をどうしらたよいのかと、具体的な「行動計画」を立てる。その計画は、今日何をしたらよいのかを、導き出してくれる。仕事の依頼を運にまかせてひたすら待つ人と、受注するために今日を積極的に活用する人とでは、大きな違いが生まれてくる。

年収を決める時に大切なのは、本当に実現したい目標金額をあげることだ。絵に書いただけの希望金額ではいけない。

 

3-4 利益計画を立てる(いくら儲けるか! 楽しい計算♪〜

個人事業主の事業利益とは、売上から必要経費を引いた全てが利益となる。この利益計算を表にしたものを「損益計算書」という。青色申告者は、1年間の売上げと経費を集計して、決算書を作成し税部署へ提出しなければならない。そこで、この「損益計算書」のフォーマットに従って、「見積損益計算書」つまり「利益計画表」を作成してみよう。

3-3で計画した向こう3年間の年収目標と、3-2 で算出した月額の固定費の数値を参考にしながら作成してみよう。ここでは、自宅を事務所にした場合で算出している。赤字が出る場合は、経費を押さえるか、売上を上げるか、外注費を削るかの3つの方法しかない。現実的な数値をはめ込んで、バランスをとってみよう。

さらに、事業所得額に対して翌年支払うことになる、「所得税」「事業税」「住民税」「国民健康保険料」等の金額をつかんでおこう。この税金と保険を差引いた金額が、手元に残るお金(=利益)となる。

 
利益計画表        単位:万円

  初年度 ◯年後 ◯年後 備 考
売上目標金額 300 500 1,000 ※目標の年収金額
売上原価 0 0 0 ※商品仕入がある場合。
差引金額
(a−b)=c
300 500 1,000  



家 賃 *1 60 60 60 年額120万円×50%
水道光熱費 *1 6 6 6 年額12万円×50%
通信費 24 30 36 売上により変動
消耗品費 5 8 10    〃
旅費交通費 18 25 30    〃
広告宣伝費 3 5 10    〃
打合会議費 3 6 10    〃
接待交際費 12 20 30    〃
新聞図書費 10 15 20    〃
外注工費 0 50 300 売上により外注費を想定
減価償却費 9 9 9 開設設備費50万で計算
150 234 521  
事業所得金額(控除前)
(c−d)=e
150 266 479  




所得税 *2 5.7 14.4 36.9 概算 ※青色申告控除
事業税 *3 0 0 9.5 概算
住民税 *4 5.4 9.3 26.7  〃
国民健康保険料 *5 13 20.6 53  〃 ※医療分のみ
国民年金 *6 16 16 16 定額制
40.1 60.3 142.1  
事業利益金額
e−f)
109.9 205.7 336.9  

*1 家賃、水道光熱費などの経費は、家事使用分を除く金額が必要経費として認められる。
*2 所得税の概算:(事業所得−青色申告特別控除−社会保険料控除−基礎控除)×税率−税額控除
*3 事業税の概算:(事業所得−事業主控除)×税率
*4
住民税=(市区町村民税/所得割+均等割)+(都道府県民税/所得割+均等割)
所得割の概算:(事業所得−社会保険料控除−基礎控除)×税率−税額控除
均等割:(市区町村民税/2,000〜3,000円)+(都道府県民税/1,000円) 
※人口区分による。

*5
国民健康保険料=(医療分/所得割+均等割)+(介護分/所得割+均等割)
医療分/所得割:住民税額×1.94 ※医療分の年間最高限度額は53万円。
医療分/均等割:26,100円
介護分/所得割:住民税額×0.17 ※介護分は40〜64才の方のみ対象。
介護分/均等割:7,200円    

*6
月額:13,300円

 

3-5 売上計画を立てる

だいぶ、仕事の数字的イメージが具体的になってきただろうか。これで、業務内容を明確化して値段を付け、年収を設定、経費をつかんで、利益を確保するところまでを終えた。最後に、何をどれだけやったら、目標の年収が稼げるかを考えておこう。

先ず営業のセオリーとしては、いかにレギュラーの仕事を確保して売上を安定させるかにある。固定費をカバーする売上を、なんとかレギュラーの仕事で稼ごう。すると気分的にも非常に楽になる。多少リスクはあるが、単価の高い単発仕事に、ボーナス気分でチャレンジする余裕も生まれてくるというものだ。

例えば、固定費の200万を年4企画(単価30万)の会報誌の企画制作とA社の年2回のダイレクトメールの企画制作(単価40万)で売上げるといった感じである。
是非やりたい仕事内容を具体的にイメージして、自由に組立をしてみよう。売上計画をねりながら、楽しくなってきたらしめたものだ。ここで楽しめるようだと、実現の可能性は大きくなる。

 

3-6 “夢”を描こぉーー!

目標を達成するために、行動していく原動力となるものはなんだろう。それは、自分が描いた“夢”を、実現させたいと思うエネルギーだ。

初めは皆、いろんな夢を抱いている。しかし、やっていく中で、仕事がなかなか取れなかったり、トラブルにあったり、失敗が続いたり、貯金が心細くなったり...。すると、不安に落ち入り、自信をなくしてしまうのである。大事なのはこの時、「初心忘れるべからず!」、夢を実現させたいという熱い気持ちを思い出そう。きっと、再び立ち向かっていく元気を取り戻せるだろう。

それから、大きな夢の実現の過程には、比較的実現可能な小さな夢をいくつも設定しておくといい。一つ手に入れると自信がつくし、成功体験となって、次へのチャレンジの気持ちが高まっていくからだ。

 

■ちょっと余談:成功哲学!その前に...

本屋さんへ行くと、成功哲学を語ったノウハウ本がたくさんある。何冊も読んだ訳ではないが、それらに書かれていることの要旨はだいたい次のようなことだ。

 成功した姿を明確にイメージする。
目標を具体化させて、計画をたてる。
必ず実現するという強い信念を持ち、常にプラス思考で行動する。

これを実行に移したら、たいていの人がそれなりの成果を得られると思うのだが、いかがだろうか?

ある時、中村天風氏の「やれば出来る。やらないから出来ない。」という言葉に出合った時、私は目からコンタクト(ウロコ?)が落ちる思いがした。そうなのだ、多くの人は、“あんなこと、こんなことが出来たらいいなぁ〜”と思っているだけで、実行に移さない。だから、いつまでたっても夢のまま。

海外旅行で例え話をすると---バリ島に昔から惹かれていて、いつか行きたいと思っている。思っているだけじゃ、いつまでたっても行けやしない。実現しようと思ったら、旅費を用意して、いく日を決めて、休みをとる。旅行会社に申込んだら、何があってもスケジュールは変更しないと、頑張って休みをとれるように仕事を調整する。---こうして、長年の夢が一つ実現する。

しかして、成功への第一歩は、この一歩を踏み出すことにあるようだ。

 

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