Action! Report  No.3:市場環境を調べる No.1

 

では次に、市場環境ついてのデータをまとめおきたい。

1 ライセンスビジネスの市場規模推移/キャラクター商品全体の市場規模推移


ライセンスビジネスの市場規模推移(推計値)
グラフ1

単位:億円 キャラクターブランド
商品市場(A)
*1
ライセンスビジネス市場
(A)×4%
*2
伸長率 *3
1995年 17500 700 100%
1996年 16500 660 94%
1997年 18500 740 106%
1998年 19300 772 110%
1999年 21000 840 120%
2000年 22000 880 126%
2001年 23000 920 131%

*1:キャラクターブランド商品市場の数値は、「キャラクター・ライセンシング白書2000年版/綜合ユニコム株式会社」より「キャラクター商品における小売市場規模」の数値を引用した。
*2:ライセンスビジネス市場の数値は、ロイヤルティを4%として推計したもの。
*3:伸長率は1995年を100とした数値。

:市場規模については、各調査機関の推定の域(算定基準によって大きく数値が異なる)にとどまっており、市場関係者にもその実態は把握できていないのが現状とのこと。上記の数値も、調査機関によりかなりのひらきがある。

1)バブル崩壊後、長引く個人消費の低迷のなかで、「キャラクター商品」に対する消費は伸長している。その傾向がはっきりと見られるのは、97年の“ハローキティ”の復活ヒットからと言われている。

2)ライセンス・ビジネス市場は、どんなキャラクターがヒットするか予測が難しく、市場全体を総合的に判断するファクターを特定し、推計していくことが非常に困難。それゆえ、結果論として、ヒット・キャラクターの輩出により市場規模が拡大、変化をしてきている。

3)近年のキャラクターとキャラクター商品の広がりを背景に、ユーザー層もまた広がりを見せているので、ここ数年は安定成長が見込めるものと推測されている。

4)今後注目するジャンルとしてデジタルメディアがあり、その展開と共にキャラクター活用の伸長が見込まれているため、キャラクター市場は未だ発展途上という見方が有力。

■注目Point!
1995年以前の市場規模伸長率は、0.5%前後であり、この時期は「Jリーグ」「セーラームーン」「ディズニー」等が貢献していた。それと比較すると、1997年以降の市場伸長は、非常に好調に拡大してきている。その牽引役となったが、「ハローキティ」「ポケモン」「たれぱんだ」等のビックヒット・キャラクターだ。こうしたブームにより市場が活性化し、キャラクター・ビジネスへの注目度そのものを上げている。(→異業種よりの新規参入が急増中!?)

モノが売れない時代の救世主として、キャラクター商品が“差別化記号”として活用されている。しかし、ヒット・キャラクターに依存する戦略は、同時にキャラクターのパワーの推移に左右されるため、メーカーは、キャラクター戦略が有効としながらも、次の手を検討する時期にあるのではないかと思う。

 
2 ライセンス分野別(商品化、広告販促等)市場規模推移
 
※現在データ未入手。
 
■注目Point!
ライセンスビジネス市場規模の内、広告販促使用の比率の数値がつかめていないが、市場動向を見ていくと、以下の分野で確実にそのニーズは高まっているようだ。
1)オリジナル・CMキャラクター
タレントと比較した場合、手法によってイメージを膨らませることが可能、プレミアム・ノベルティの展開がしやすい、広告表現との連動がしやすい、等のメリットがある。
2)コーポレート・キャラクター
コミュニケーション活動の手段として、企業名(ロゴ・マーク)だけでなく、キャラクターを付ける傾向が強くなってきている。(→オリジナル・キャラクターのニーズ)
 
3 商品分野別市場規模推移

 
キャラクターブランド商品分野別市場規模推移と今後の予測

 
グラフ2
                                       単位:億円
  1996年 伸長率
1997年 伸長率
1998年
(見込)
伸長率
2001年
(予測)
伸長率
食  品 5780 100 6800 118 7100 123 8000 138
衣料・靴 3150 100 3350 106 3500 111 4200 133
日用品・小物 3580 100 3980 111 4100 115 5000 140
情報通信   0 -  40 100  55 138  90 225
家  電   0 -   4 100   5 125  10 250
時計・カメラ 2350 100 2650 113 2800 119 3200 136
文  具 2820 100 3220 114 3400 121 4000 142
玩具・ゲーム 7000 100 7200 103 7500 107 8000 114
合 計 24680 100 27244 110 28460 115 32500 132

資料:「キャラクターブランドの市場戦略徹底分析('98〜'99)」株式会社富士経済 より

1)商品分野別にみた内訳では、「玩具・ゲーム」と「食品」の2分野で全体の50%以上を占めている。市場の最も大きい玩具・ゲームの場合は、殆どの商品が何らかのキャラクターに関連しているケースが多いため、市場動向がキャラクター商品の伸びとも直接関わってくる。

2)「食品」「衣料・靴」「文具」等の分野は成熟分野であり、商品全体市場としては余り大きな伸びは期待できない。反面、差別化要素としてキャラクターブランド商品市場としては期待が持てる。又、今後キャラクターがより広範囲に採用されていることを考えあわせると、「日用品・小物」分野は予測以上に大化けする可能性がある。

3)「情報通信」「家電」は、市場が立ち上がったばかりであり、生活者の許容度によって、今後の動向が注目される。

                    
全商品に占めるキャラクター商品のウエイト
                      
単位:億円
商品市場 全商品売上高 キャラクター商品売上高 構成比%
食  品 6674.0 396.3 6.0 
衣料・靴 2427.0   25.6 1.0 
日用品・小物 1622.0   13.4 8.0 
情報通信   103.0  20.0 20.0 
家  電 8880.0  0.2 0.02 
時計・カメラ 3200.0  12.4 4.0 
文  具 8010.0 145.3 2.0 
玩具・ゲーム 1999.0 1521.1 76.0 
合  計 25686.0 2518.5 10.0 

資料:「キャラクターブランドの市場戦略徹底分析('98〜'99)」株式会社富士経済 より

1)従来のキャラクターの支持層は圧倒的に子供であったが、近年のキャラクターブームで年齢層が上がってきたため、「情報通信」「時計・カメラ」「日用品・小物」という分野での構成比が高くなってきている。

2)特に「情報通信」分野は、急速に実績が伸びており、キャラクター商品市場の中では、最も期待できる商品分野であるといえる。その他の分野では、既にある程度の市場が形成されているので、今後大幅な変化は見られないと予想されている。

■注目Point!
商品分野では、コンテンツも含めて「情報通信」がやはり今後の動向を握るキー・ファクターといえる。
 
4 ライセンスビジネスの市場動向


1)子供から大人、世代間コミュニケーションとしての商品開発
人気ランキングを見ると、ダントツ人気を二分する“ハローキティ”は、女子児童対象から大人へ年齢層を拡大、“ポケモン”は、男子児童に限らず、女の子にも人気のキャラクターとなって、年代、性別の垣根を超えたキャラクターが上位にランクインという結果となっている。
キャラクター商品市場においても、今後最も大きな課題が少子化だが、打開策は子供だけでなく大人も視野にいれた商品開発やマーケティングを行うことにあるといえる。

99年度「キャラクター商品購入動向調査」による
キャラクター・ランキング ベスト15
順位 キャラクター名 ベスト10の
主な購入理由
(%)
1  ハローキティ 可愛い 17.05  
2  ポケットモンスター おまけがついてくる 16.68  
3  ミッキーマウス 可愛い 6.33  
4  くまのプーさん 可愛い 4.59  
5  ドラえもん おやつ 4.01  
6  スヌーピー 可愛い 3.88  
7  たれぱんだ 可愛い 3.16  
8  アンパンマン おやつ 2.17  
9  ミッフィー 可愛い 1.79  
10  ウォレス&グルミット 欲しかった 1.50  
11  デジモン   1.44  
12  ドナルドダック   1.40  
13  ピングー   1.26  
14  遊戯王   1.05  
15  ウルトラマン   0.96  

資料:「21世紀のキャラクター商品市場の戦略と展望」(株)キャラクター・データバンク より

人気キャラクターに共通するものは何か? それは、“可愛い”。人は、可愛いものを見ると思わず笑顔になる。笑顔になると言うことは、それによって“幸せな気分”になれるということだ。可愛いキャラクターには、人が普遍的に求める“愛する心地よさ”があるのだ。そうすると、大人へさらにシニア層へ、キャラクター展開を図ることは、十分に考えられることだ。

2)次なる市場「シニア・マーケットへ」のアプローチ
キャラクター業界にとっても、次の市場として注目しているのは、可処分所得が高く元気なシニア・マーケット。55才以上のシニア層が総人口に占める割合は、2000年時点で30.2%だが、2005年には34.2%、2010年には36.5%と徐々に大きくなっていく。第1次アニメ世代(30代半ば〜40代半ば)が、シニア層に突入していくと、子供や孫のためのキャラクターではなく、“自分のための”キャラクター商品を購入する可能性は高くなると予測している。
例)こうした状況に先駆け、サンリオが高齢者・介護用品向け新ブランド「ハローキティ コミュニケア」を立ち上げている。また、ディズニーでもシルバー市場への参入の必要性を表明しているという。

3)今後成長が見込めるキャラクターのジャンルは「TVゲーム」「オリジナル」
綜合ユニコム株式会社が1999年に実施したアンケート調査結果(ライセンサー84社)によると、今後、成長の可能性のあるキャラクターのジャンルは、「TVゲーム」「オリジナル」がそれぞれ43.5%で「テレビ」を上回る回答を得ている。

最も成長が見込めるプロパティ・ジャンルグラフ5
資料:「キャラクター・ライセンシング白書2000年版」綜合ユニコム株式会社 より

今後成長が注目されるキャラクターのジャンルとして、同率一位に「オリジナル」が挙がっている。これは“たれぱんだ”の大ヒットによる影響が、かなりあるのではないだろうか。これまでマスメディアによって知名度&人気を獲得したキャラクターでなければ商品化権ビジネスは成立しないという常識が、くつがえされたからだ。これは、新規参入に可能性を与えてくれる。

また、“たれぱんだ”の成功事例は、市場ニーズを再発見し、これからのマーケティングに大いに貢献してくれたと思う。キャラクターに求めるもの、キャラクターが果たす役割を見直すことで、時代性に合った新たな商品コンセプトが生まれてくる。

さらに、“可愛いイラスト”と“キャラクター”の違いを、“たれぱんだ”は明確にしてくれている。“たれた”ポーズに表現されたキャラクターの持つ世界観がしっかりとしていること、キャラクターのバックグラウンドがしっかりと伝わってくること、これが、優れたイラストと違う点だ。そこへ私たちは共感する。キャラクターづくりの極意を教えてもらったように思う。

4)今後のライセンス・ビジネス市場の成長率
3)と同様のライセンサー企業へのアンケート調査(1999年実施/綜合ユニコム株式会社)によると、1999年度の前年比売上高の伸び率は7割強の企業でプラス成長をとげ、今後の見通しも約6割の企業が成長していくと回答している。

1999年度売上高の伸長率の見込  ライセンス・ビジネス市場の将来展望

グラフ6
資料:「キャラクター・ライセンシング白書2000年版」綜合ユニコム株式会社 より
 
■注目Point!
市場動向を探りながら考えるのは、事業領域をどこに置くかということだ。資料をあたる範囲では、当初考えているジャンルへのニーズは高まってきているようだ。
 
5 キャラクター商品の販売効果


キャラクター採用によるメリット、デメリット
メリット デメリット

商品力
・商品に付加価値が生まれる。
・特に若い消費者の間で企業イメージが向上する。
・購買層の拡大。(若者層)
・商品競争力が向上した。(→売上増加)

プロモーション効果
・キャラクター自体に宣伝効果がある。
・商品認知度が上がった。

流通チャネル
・新規取引の増加。

商品力
・ライフサイクルの短さ。
・商品の購買層が絞られる。

価格/生産コスト
・商品単価が割高になる。
・版権取得のためのコストが高い。
・ライセンス料が高く採算が合わない。
・アイテム数増加で、生産効率が落ちる。
・飽きが早く、在庫リスクが大きくなる。

流通チャネル
・販売先が限定される。

その他
・ライセンサーとの契約に時間がかかる。
・ライセンサーの方針により、自由な販促活動が行なえない。
・事業展開に制約がつく。
・キャラクター力に頼りがちで自社の商品企画力が育ちにくい。


資料:「キャラクターブランドの市場戦略徹底分析('98〜'99)」株式会社富士経済 より
■注目Point!
ライセンシー企業のネックは、先ずロイヤルティの問題だろう。ロイヤルティは上がる傾向にあるので、そのまま利益を圧迫してしまう。サンリオは非常に良心的なシステムで契約を行っているようだ。その辺にも、好調な要因があるのではないだろうか。相場を勘案しながらも、相互メリットを産み出す契約システムが課題だ。
 
6 販売チャネル別キャラクター商品売上


チャネル別売上シェア ランキング30
                
合計金額=22362704
チャネル名 (%) 累積シェア
1. 大型スーパー 18.8 18.8
2. スーパーマーケット(食料品店) 10.8 29.6
3. 大型玩具店 9.6 39.2
4. デパート 9.5 48.6
5. キャラクターショップ 8.6 57.2
6. テーマパーク売店 7.2 64.4
7. コンビニエンスストア 3.5 67.9
8. 通信販売 3.3 71.2
9. ホームセンター 2.7 73.9
10. 大型家庭電器/カメラ店 2.2 76.1
11. 本屋 1.9 78.0
12. 日用雑貨/家庭用品店 1.8 79.8
13. ディスカウントストア 1.8 81.5
14. 玩具店 1.7 83.3
15. 趣味/雑貨/ギフト/アクセサリー店 1.7 85.0
16. ゲームセンター 1.7 86.7
17. 薬局・化粧品店 1.5 86.5
18. アパレル店(婦人/紳士/子供服) 1.5 88.0
19. レコード/ビデオショップ 0.9 88.9
20. ゲームソフト専門店 0.8 89.7
21. 郵便局 0.8 90.5
22. ファミリーレストラン 0.8 91.3
23. 文房具店 0.5 91.8
24. 駅売店 0.5 92.3
25. 空港売店 0.03 92.3
26. 観光地お土産屋 0.03 92.3
27. 問屋 0.03 92.4
28. 菓子屋 0.02 92.4
29. 靴・履物店 0.02 92.4
30. 映画館 0.02 92.4

資料:「21世紀のキャラクター商品市場の戦略と展望」(株)キャラクター・データバンク より
 

1)チャネルの特性により、売れ筋商品(キャラクター、商品アイテム)に違いが見られる。

2)流通チャネルで売上トップは大型スーパー。その中でイトーヨーカ堂が際立っており、売上2位のダイエーの2倍、全体シェアでは約9%を占めている。

3)未就学児童、小学校低学年、第1次アニメ世代(30〜39才)を対象に、ゲームソフト、玩具付き菓子等の売上でコンビニエンスストアの伸長が見られる。

4)新しい販売拠点としてビニエンスストアや、ニッチだがファミレスが期待されている。
 

市場環境を調べるための資料読みを通して、マクロ的に市場のアウトラインやその動向をだいたいつかむことが出来た。所謂その業界の基礎知識というところだ。そして、念頭にあるのは、具体的にどこに事業の領域を求めるか。つまりビジネスチャンスはどこに?
次の作業は「相場の価格を調べる」で、いよいよ資料ではなく、聞き取り調査を始めるので、「実際に見る」ところから検討を加えていきたい。(昔から、「聞くのと見るのでは大違い。」さらに「見るのとやるのでは、これまた大違い!」といわれているから...。)

 


 

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