4-2 著作権の基礎知識
ここで、著作権に関する基礎知識をサックリと押さえよう。
4-2-1 “マルC”って何?
≫4-2-2 こんな場合、著作権者は誰になるのか?
≫4-2-3 著作権の登録
≫4-2-4 著作権の保護期間
≫4-2-5 許諾が必要な著作物を利用する場合の手順
≫4-2-6 著作権の問合せ先一覧
≫4-2-7 著作物を自由に利用できるケース
≫4-2-8 知的所有権とは?
4-2-1 “マルC”って何?
一般的にマルC表示と言われ、Copyright(著作権の意)の 頭文字の C を丸で囲んだもので、この記号の後に著作権者名(著作者と同一でない場合もある)とその著作物の第一発行年を一体にして表示している。
これは、万国条約により、日本のような著作権の無方式主義*4の著作物も、このマルC表示を付記していれば、著作権の保護の条件として、登録や表示等の一定の方式を要求する方式主義の国においても、自動的に保護の対象となるというもの。
*4 無方式主義:著作権の取得について日本では、登録等の一定の手続きを踏まなくても、創作した時点で自動的に権利が発生する方式を採っている。(日本にも登録制度があるが、権利の取得とは無関係。)
4-2-2 こんな場合、著作権者は誰になるのか?
ケース |
著作権者 |
■会社の命令により職務上作成した
プログラム |
法人著作物/会社 |
■A社から依頼されてB社が作成した
ホームページ |
特約がなければ、基本的にB社
★後でもめないように、事前に契約書で著作権 の帰属の取決めが必要だ。 |
■友人と2人で共同で作った制作物 |
共同著作物/2人で共有 |
■3人で各々パート分けして書き上げた本 |
集合著作物/担当した部分に対して各自
★共同著作物とは違って、各人が著作した部分 が切り離して利用できる場合。 |
■A社から依頼を受けた広告代理店が、
制作プロダクションに発注して
製作されたTVCF |
TVCFは映画著作物*5の扱いとなるため、制作したのはプロダクションだが、著作権者はA社の場合や広告代理店の場合もある。
★事前に三者間で著作権の帰属を明確にしてお く必要がある。 |
■色々な記事を編集して構成された雑誌 |
編集著作物/編集プロダクション
★素材となる著作物とは別個の著作物となる。 |
■懸賞に入選した作品 |
募集要項に下記の記載があれば懸賞の主催者
★募集要項に「入選作品の著作権は、主催者に 帰属する。」という文章をよく見かける。
これは、言い換えると、「著作権は譲渡して もらうよ。」と言っているのだ。 |
*5 映画著作物:著作権の原則では、創作者が同時に著作権者であるが、多くの著作者が関わって製作される映画の場合は、それらの権利を一括して映画製作者(映画会社)へ帰属するものとしている。
4-2-3 著作権の登録
著作権は、工業所有権のように権利を得るための登録手続きというものはないが、著作権法によって登録制度がある。これは、権利行使をする際に有効となってくる。何故かと言うと、いくら創作した時点で権利が自動的に発生するとされていても、それを公に証明する手段はないからだ。
また、著作権は財産権として譲渡することができるので、著作権者を明確にする意味においても効力を発揮する。
4-2-4 著作権の保護期間
著作権の保護期間は、著作権法により以下のように定められている。
著作財産権の保護期間
著作物の分類 |
著作者名義 |
保護期間 |
個人が著作者の場合 |
実名
周知の変名 |
著作者の死後50年間 |
無名
変名 |
著作物の公表後50年間
※著作者を特定できない場合。 |
法人著作物の場合 |
団体名義あり |
著作物の公表後50年間
※創作後50年以内に公表されなかった時は創作後
50年間。 |
団体名義なし |
同上 |
映画著作物の場合 |
名義を問わず |
著作物の公表後50年間
※創作後50年以内に公表されなかった時は創作後
50年間。 |
著作人格権の保護期間
著作人格権 |
著作者の死亡によって消滅するが、著作権法では、文化の保護継承という観点から、死後も著作者の人格権を侵害するような行為をしてはならないと定めている。 |
著作隣接権の保護期間
保護対象 |
保護期間 |
実 演 |
実演を行った時から50年間 |
レコード*6 |
音を最初に固定した時から50年間 |
放送、有線放送 |
放送、有線放送を行った時から50年間 |
*6 レコード:著作権法では、媒体に音が録音されたものを指し、商品のレコード盤の意味ではない。
4-2-5 許諾が必要な著作物を利用する場合の手順
|
留意事項 |
●著作権者を確定する |
・著作権は譲渡、相続できるので創作者が著作権者とは限らない。
・著作財産権は支分権*7ごとに譲渡できるの、利用する権利を誰が所有しているか確認する。
・共同著作物の場合の著作権者は複数存在し、許諾を得るためには、全員の合意が必要となる。 |
●利用方法、利用範囲により許諾や同意を得る相手を確定する |
・利用する対象、利用方法によって、著作者人格権、著作隣接権の同意や許諾も必要になる。 |
●「使用許諾契約」を結ぶ |
・使用方法(使用形態、期間・回数、数量及び利用地域等)の具体的な内容や、使用条件(使用料、支払方法、特約事項等)を取り決める。
・使用許諾に際して、独占的に利用する権利を与える契約もある。 |
●「出版権設定契約」を結ぶ |
・出版権を得た出版社は、著作物を出版という形で独占的に利用することができるようになり、著作者も含めて出版権者以外の者が出版することを禁止できる。 |
*7 支分権:著作権はその利用形態別に、複製権、上演権、演奏権等と権利が分けられている。これを支分権という。詳細は、前ページの4-1-2 を参照。
4-2-6 著作権の問合せ先一覧
4-2-7 著作物を自由に利用できるケース
●著作権の対象外の著作物 |
・著作権保護期間を経過したもの。
・著作権が発生しない著作物(法令、国又は地方公共団代の機関、裁判所等が発行する広報資料等)。 |
●私的な範囲での利用 |
・個人又は家庭内等における利用を目的としている場合に限り、複製することができる。 |
●図書館における利用 |
・図書館サービスの公共性から、許諾なしで複製(複写サービス)できる。 |
●教育目的の利用 |
・学校その他教育機関の教材、試験問題等への複製。ただし、営利を目的とするものは除外される。 |
●著作物の引用 |
・引用の目的上正当な範囲であること、引用した部分を明瞭に区分し出典の記載をすること等、引用のルールがある。 |
●非営利目的での利用についての特例 |
・営利を目的とせず、観衆から料金を徴収せず、出演者へ報酬を支払わない上演等。 |
●報道目的の利用 |
・新聞、雑誌に掲載された時事問題に関する論説は、他の新聞、雑誌に転載、又は放送、有線放送することができる。 |
●美術著作物の利用についての特例 |
・美術作品の所有者は、公に展示することができる。
・美術品や写真の著作者又は所有者から公に展示する許諾を得た場合は、来場者へ作品紹介する目的で制作するパンフレット等へ複製することができる。 |
●プログラム著作物の所有者による複製 |
・プログラムの複製物の所有者(購入者)は、必然的な範囲で複製、翻案することができる。 |
4-2-8 知的所有権とは?
その昔、アメリカの元レーガン大統領がアメリカ経済の復権のために“プロパテント政策*6”なるものを打ち出し、無形の知恵に経済的価値を与え、強力な特許権として保護をした。そして、日本企業に対し、権利侵害をしていると訴訟を起こして、莫大な賠償請求を行って、第二の貿易摩擦とまで騒がれた時期があった。
そんないきさつから、他人の知恵にお金を払う感覚が乏しい日本でも、「知的所有権」という言葉が急浮上してきたのだ。最近では、ITの世界でビジネスモデル特許が、話題を呼んでいる。
では、「知的所有権」とは何かというと、「知的な活動によって生み出された形のない経済的価値のある産物を守る権利のこと」であり、著作権、工業所有権との関連を表にすると、次のようになる。
※知的所有権の対象は、近年拡大される傾向にあり、今後、(上記以外にも)様々なものが権利の対象となる可能性がある。(文化庁の広報より)
*6 プロパテント政策:「創造された技術に強力な特許権を与え、有効活用を支援する政策。知的財産権の保護・強化の動き。」(imidas2000)
<参考文献>
・「著作権法ハンドブック」文化庁文化部著作権課内著作権法令研究会編著 社団法人著作権情報センター
・「著作権が明解になる10章」吉田大輔著 出版ニュース社
・「知って得するソフトウェア特許・著作権」古谷栄男/松下正/眞島宏明著 アスキー出版局
・「マルチメディアの著作権入門」宮下研一著 前田哲男監修 PHP研究所
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