●バイオリンの製作学校へ進まれたのはどういう切っ掛けからですか? |
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偶然、テレビでバイオリンの製作学校が近所にあるのを見ました。もともと、手先は器用な方なので、何か物を作る仕事ができたらなーと思っていました。バイオリンの演奏を20歳ぐらいから好きになってやっていて、これは自分に向いてると思って、すぐに見学に行きました。 |
●学校では、どのような授業があるんですか? |
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僕が通った学校は、大阪の高槻市にある「バイオリン工房クレモナ」という所です。まずは木工の基本的なことを習います。刃物や道具の手入れや調整や、製作に使う特殊な道具を作ったりして作業に慣れる事から始めます。それから、バイオリンを少しずつ習いながら作っていきます。最初の楽器ができるまで1年から1年半ぐらいかかります。バイオリンのほか、ビオラ、チェロも作ります。
基本的に4年制ですが、各生徒によって作業内容もペースも違うので、あまり学年の意識はなかったです。製作以外にはイタリア語と、楽器の歴史や知識に関しての授業があります。
学校では、これから卒業生を中心に[PIACERE]というグループを作り、活動を初めます。
今まで日本になかった「独立した職人達が組織を作って製作・販売活動を行う」(イタリアでは 300年前から行われている)というものです。 |
●学校卒業後、バイオリン製作の本場イタリアへ行かれて得たものは? |
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僕は、語学留学として行ったので製作の勉強はあまりできませんでしたが、色んな職人さんと出会い、本物のストラディバリウスを見て感動しました。友達もたくさんできましたし、イタリアの文化を体験できて良い経験ができたと思います。食べ物もおいしかったし。 |
●お仕事としての楽器作りで、難しさはどの辺にありますか? |
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製作は慣れればある程度はできるようになりますが、その後、自分の楽器を売ることが難しいです。新作の楽器はどうしても、よく弾きこまれた楽器と比べるとまだ音が出にくいので見劣りしてしまいます。修理に関しても、お客さんの希望を聞いて、実際の楽器の状態をよく見て、修理方法などをよく考えなければなりません。 |
●楽器作りは、全部一人でやるものなんですか、それとも分業というか、それぞれのパーツを分担してですか? |
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基本的に全て一人でやります。立派な工房を構えている人は、弟子などにある程度手伝わせる人もいます。工場製の安い楽器は各部の分業制で作っています。 |
●音色は、作る人によって(材料によって?)大きく違いますか。 |
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製作者によって、微妙にカーブや膨らみなどが違いますし、作業の精度も違い、そこが音に影響してきます。材料も産地や乾燥の程度によって大きな違いがあります。これらは作られてから年数が経つほどに違いが出てきます。 |
●よく物作りの世界では、一人前まで修行何年とかいわれますが、そういうのってありますか? |
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一通り楽器を作るだけなら3年ぐらいで出来るようになりますが、それ以外にもいろんな経験が必要だと思いますし、他の職人さんや演奏をされる方との交流が重要だと思いますので、一人前と言えるまでは10年ぐらいかかるのではないでしょうか。僕は学校に入学した時から5年、まだまだです。 |
●これからチャレンジしたい事や、夢に描いているビジョンは? |
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自分の楽器をいろんな人に弾いてもらいたい。そして、大切に使ってもらえるような楽器を作っていきたいです。それと、またイタリアに行きたいです。出来ればむこうで仕事をしてみたい。 |
●読者の方へのメッセージ、自己PRをお願いします。 |
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僕は家族の理解も得られ、学校も近くで、良い先生や知人に恵まれて幸運でした。今のところまだ自立は出来てませんが、がんばって自分の工房を持ちたいと思います。 |