2. 営業先を見つけよう
クリエイターに営業が苦手な人が多いのは仕方ないと思う。この2つは、水と油のごとく、全く質の違う仕事だからだ。
制作は、手を抜くことなく、取組んだ仕事を形にしていく作業。営業はと言えば、確率の問題だから、ニーズが有る無しを判断しながら次々とアプローチしていく活動。ダメだったら、切り換えて次へと。これを、制作の時と同じようなやり方で取組んだら、かなり疲れてしまうだろう。
しかし、独立したからには、少なくとも自分を売り込みに行かなくてはならない。つまるところ、営業に力をさけるかどうか、営業が出来るかどうかがで将来が決まる。
開業したって、待っているだけでは、仕事はやって来ない。
2-1 自分を必要としてくれるお客様(=営業先)は誰?
≫2-2 媒体を効率良く使って自分の宣伝をしよう
≫2-3 営業の基本はやはり顔を見て話すこと
≫3. 最低限のビジネス・マナー
2-1 自分を必要としてくれるお客様(=営業先)は誰?
自分に仕事を発注してくれるお客様は、誰だろう。
勿論、業界や職種、仕事のやり方で違うが、広告業界を例にとると、次のようなケースが考えられる。
┌──────────────┴──────────────┐
広告代理店 |
制作
プロダクション |
印刷会社 |
クリエイター
エージェンシー |
直接取引
契約スタッフ
外注スタッフ |
│
契約スタッフ
外注スタッフ |
│
契約スタッフ
外注スタッフ |
│
契約スタッフ
外注スタッフ |
│
登録スタッフ
派遣スタッフ |
注)契約スタッフ:案件毎に仕事を受ける外注としてではなく、期間を設定して業務にあたり、
報酬を受ける形体を指す。プロジェクト契約、年間契約等。
■ 営業先 -- 広告業界の場合
・クライアントとなり得る一般企業
★自分の専門性や、得意な業界がある場合、企業と直接契約をするのも一策。
・広告代理店
・制作プロダクション
・印刷会社の制作部門
・クリエイターエージェンシー
★アメリカンスタイルのエージェントが、日本にも発足し始めている。
(≫1-1クリエイターエジェンシーに登録する)
営業先毎に、それぞれ一長一短があるだろうが、自分の得意分野、ワークスタイルに合う仕事はどこへアプローチしたらよさそうだろうか。
その辺を見極めたら、営業先リストを作ってみる。リストデータを集めるのに、一般企業だったら「求人情報誌」がお勧め。ニーズがある証拠。社員契約ではなく、契約スタッフ(給料ではなく報酬としてもらう)ではどうかと提案してみる。
広告代理店、制作プロダクション、印刷会社は、電話帳等も活用できる。
2-2 媒体を効率良く使って自分の宣伝をしよう
さあ、これで営業先のリストも出来た。営業を開始したいが、どうやって?
営業アプローチには、以下のような方法がある。最初から、自分に合う方法で効率のよいアプローチが出来るわけではないから、色々と試してみよう。
● アポイントを取る |
一番効率が良いのは、訪問前に電話をかけ、担当者を聞き出し、要件を伝えてアポイントを取ることだ。アポイントがとれたら、確率はかなり高い。
もし、興味を持ってもらえても、今は人が足りていると言われたら、営業ツールを郵送しておこう。
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● 飛び込み |
電話では、顔が見えないだけに、話を切り出す前に切られてしまうこともある。そこで、いきなり訪問という手がある。受付で名刺を出し、要件をつげ、担当者に伝えてもらう。担当者に忙しいと言われたら、営業ツールを渡し、日をあらためて時間をもらう。会社訪問は、社内の雰囲気や社員の様子が分かるので、取材のつもりで気軽に行ってみよう。
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● DMを送る |
電話でのアポ取りも飛び込みも苦手をいう方は、とりあえず営業ツールを送ろう。(この時、挨拶文を付けることを忘れずに。)ただし、この場合も担当者が分かっていた方が良いので、事前に電話で問合せをしよう。送ってから数日後、読んでもらえたかどうか電話フォローが出来れば完璧。
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● Eメールする |
アプローチしたい会社がホームページを持っていたら、Eメールで問合せするのも方法だ。メールでも印象の善し悪しがあるから、言葉使いには気を付けよう。
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● インターネットの活用 |
インターネットは、是非フル活用しよう。SOHO支援サイトや掲示板、PRが出来るメルマガなど色々ある。(≫お役立ち!付録:自営支援を活用しよう!)
ネットを使って自分を売り込む場合には、具体的にどんな仕事ができるのか、依頼してくれたら相手先にはどんなメリットがあるのか、それを裏付ける実績や能力、それらを端的・明確にアピールすることが重要。掲示板や打診メールに、長々と経歴や自己紹介を書く訳にはいかないので、ホームページと連動して情報をしっかり伝える工夫をしておこう。
|
営業アプローチを行ったら、会社毎に営業記録をつけておく。感触を得られた所や感じの良かった所へは、定期的に連絡をとってみること。こういうやり取りから、担当者とのコミュニケーションが始まっていく。こういう時のツールには、Eメールが便利だ。
営業効率をアップさせるには、自分に仕事を発注してくれそうな企業ばかりを選んで、アプローチすることだ。しかし、最初からそんなうまい営業リストが、出来るわけがない。営業を開始すると、自分が考えていた所より、思わぬ所に面白い仕事があったりする。とにかく、フットワークを使って、最初は動いてみよう!
私の場合、自分が営業に向いているタイプとはとても思えなかったが、やってみると、飛び込み営業も出来てしまった。好奇心が先行して、興味がわくのである。アポイントを取って、初回訪問する時などは、“今日は、どんな人に出合えるのかなぁ〜”と楽しくなる。
営業とは、1人でも多くの人に出合い、自分をアピールし続けることだ。
2-3 営業の基本はやはり顔を見て話すこと
営業には、自分を知らしめるインフォメーション活動と、仕事を取るまでの交渉というようなコミュニケーション活動がある。インフォメーション活動は、DMしたり、インターネットを活用したり、居ながらにしてもできるが、やはり自分を売り込んで仕事をいただくには、顔を見て話すコミュニケーションが必要。
営業はフットワーク! 積極的に会社訪問して、担当者に会いに行こう!
さらに、会社訪問すると、その会社の雰囲気が分かるし、そこで働く人の顔が見える。これは、将来クライアントにして良い会社かどうかの貴重な判断材料だ。つまり、自分との相性を感じ取ることが出来る。(いくら、大手の大企業をクライアントに持っていても、相性が悪い会社だと、なにかと仕事の上で苦労する事が多い。)
営業活動は、自分と相性の良い会社を探しに行く、ぐらいに考えよう。貴方が探すと同時に、貴方に出合うのを待っている人が、きっとどこかに居るはずだ。
■ちょっと余談:営業センスと営業スキル
「キミはなかなか営業センスがあるね。」と誉められたいものだが、ではそのセンスとは?、もっとつっこんで、どんなスキルが営業には必要なのだろうか。
●人間的魅力と信頼が基本
嫌なヤツとは会いたくないし、いい加減なヤツとは仕事をしたくない。これは、万国共通。ちょっと古いが、昔は“商品を売る前に自分を売れ!”なんて言われていた所以がここにあるということだ。(でも、これはクリエイターだって同じこと。)
●お客様は「まず断わるもの」という認識を持っている
ここが、ポイントだ。営業では、断わられるのは当たり前、しかも前提となっている。感性に生きるタイプの弱いところは、ここじゃないだろうか。営業マンは、断わられ続ける中で、対案を出して交渉していくのことが、仕事そのものなのだ。断わられて落ち込んでいたのでは、とても勤まらない。
●断わられたところから始まる応酬話法を身に付けている
かけひき上手となるこの応酬話法が、まさに営業スキルの中心といえる。「営業は口がうまい」というのは褒め言葉ではないように聞こえるが、商談はこのやりとりで決まっていくのだから、すばらしいスキルだ。(応酬話法は、アプローチに始まり、商談、プレゼンテーション、クロージングの各プロセスを踏んでいく。その全てに、応酬話法が組み込まれている。)
●プロのセールスマンシップ
必ずお客様のお役に立てるという自信と具体的な提案能力。(これも、クリエイターだって同様。)
営業は苦手、そこに時間をさくぐらいならクリエイティブ能力を磨きたい。という考え方にも勿論賛成。だが、もう一度、営業スキルを読み直してもらえないだろうか。クリエイターだって、お客様あっての仕事。プレゼン(説得)なくして有り得ない。赤字で書いた部分の営業スキル、これってプレゼン・スキルに共通するのではないだろうか。 |
3. 最低限のビジネス・マナー
“この人なら仕事を発注しても大丈夫”という好印象を与えるための、ビジネス・マナーとは?
ビジネス・マナーといっても、基本は一般常識のマナーと同じ。しかし、最近この一般常識を身につける機会が少ないようだ。社会経験をあまり積まずに、フリーランスになる人も業界的には多いので、意識して心掛けていきたい。
:ビジネス・マナーをチェック!
チェック項目は、クリアしているだろうか。インパクトある個性も売りモノとはいえ、ビジネスの世界で仕事をするわけだから、クリエイターの非常識は慎みたい。
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